2011年07月19日

「心」以前と以後

「決定版 夏目漱石」(25)

江藤淳 1932-1999
jun etou

2006.9.20 第12刷発行(新潮文庫)
(この本の内容は1955-1974に書かれたもの)

<「心」以前と以後>
「「心」までの漱石の作品は、いわば「明治の精神」の
枠の中、明治という時代を直接間接に律していた価値の
体系の内部で書かれていた作品であった・・・これに
対して「心」以後の二つの作品「道草」と「明暗」は、
もうそういう明治的価値の枠組みが消滅してしまった
新しい時代の只中で書かれた作品であります。」(江藤)

「夏の暑い盛りに明治天皇が崩御になりました。その時
私は明治の精神が天皇に始まって天皇に終ったやうな気
がしました。最も強く明治の影響を受けた私どもが、其
後に生き残っているのは畢竟時勢遅れだといふ感じが
烈しく私の胸を打ちました。」
(「心(夏目漱石)」より)

「明治の精神」とは、エゴイズムという人間の天然自然
の欲望を醜悪なもの、と考える精神です。そして、新時代
の精神とは、それを醜悪なもの、とは考えない精神です。

鴎外は、新時代に背をむけた、そして漱石は、自分とは
相容れない新時代に突入したのである。

panse280
posted at 18:59

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字