2011年07月12日

漱石の漢詩文

「決定版 夏目漱石」(18)

江藤淳 1932-1999
jun etou

2006.9.20 第12刷発行(新潮文庫)
(この本の内容は1955-1974に書かれたもの)

<漱石の漢詩文>
江戸中期から明治初期にかけては、ある意味で
日本人が漢詩文についての自己表現に最も熟達
した時代であり、漱石は、徂徠門下に端を発する
江戸の漢詩人たちの、最後の、しかし最良の一人
だったのである。

「余(漱石)が英語に於ける知識は無論深しと
云うべからずも、漢籍に於けるそれに劣れりと
は思わず。」

<文学と教養>
漱石は、和、漢、洋の三つの学に通じた明治の
教養人の典型であった。我々は、小説家として
の漱石を語るが、教養人としての漱石を忘れて
いる。今日の作家に、教養を求められること
はない。理想を喪った社会の文化というものが、
どの程度のものでしかないということを、今日の
無教養の跋扈(ばっこ)ぶりほど、雄弁に物語る
ものはない。

panse280
posted at 20:42

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