2011年07月08日

明暗--漱石の変貌

「決定版 夏目漱石」(14)

江藤淳 1932-1999
jun etou

2006.9.20 第12刷発行(新潮文庫)
(この本の内容は1955-1974に書かれたもの)
当時、江藤氏は23歳の慶応の学生だった。

<明暗--漱石の変貌>
「漱石の「明暗」における変貌の底には、・・・
女性的要素の発見、及び、「詩」のない日常生活に
対する非感傷的な認識が秘められている。そして、
「道草」に於いては、日常的現実の悪臭にあてられ
て生理的不快をすら感じていた彼が、ここではその
強烈な最後の生活力と意志とで、そのような嫌悪感
をのり超えている。」

「人間嫌いだった作者にとって皮肉なことには、
ぼくらが「明暗」の底に感じるものは、おどろくべき
貪欲な、人間に対する興味以外のものではない。
・・・
ぼくらが「明暗」を読み進むうちに感じる快感は、
ナポレオンの伝記を読む時の快感に似ている。」

「「明暗」で描かれた女達は、実に驚嘆すべき
知力の持主である。・・・つけ焼刃の教養になど
わずらわされない生活智が、・・・あたえられた
例であって、・・・(こうした)生活智を持った
知性人というものが描かれぬかぎり、日本の小説
は、このような劇的な対話を決して所有すること
は出来ないことを物語っている。」

panse280
posted at 21:24

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