2011年07月04日

「行人」--孤独と東洋的自然観

「決定版 夏目漱石」(10)

江藤淳 1932-1999
jun etou

2006.9.20 第12刷発行(新潮文庫)
(この本の内容は1955-1974に書かれたもの)
当時、江藤氏は23歳の慶応の学生だった。

<「行人」--孤独と東洋的自然観--漱石46歳>
「素朴な分類をあえてすれば、西欧人にとって、
「自然」は邪悪かつ醜怪を極めたものである。
しかし東洋人にとって、少なくとも、日本人に
とって、それは「無」の表現であり、その中に
自己を解消せしめることの出来る「救い」の存在
する場所であるかのように見える。ここには「無」
が存在する。そしておそらく、西欧人にとっての
「虚無」とは、なにも存在しないことであろう。
この決定的な相異--「無」に対する肯定的及び
否定的態度の間の断層--が、ロンドン留学中の
漱石を狂人に近くした有力な原因であるといって
よい。」

漱石は「行人」において「生活人の最も本質的な
生存の形態を探りあててしまったかの感がある。
・・・つまり彼の前に立ちはだかっているのは
「自然」ではなく、打っても叩いても平然として
いる「他人」であり、彼はこの不可思議な存在を
愛さなければならないのである。」

panse280
posted at 18:50

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