2011年06月19日

「坊っちゃん」の職業選択

「世界文学のスーパースター夏目漱石」(15)

ダミアン・フラナガン 1969-
damian flanagan

2007.11.29 第1刷発行(講談社インターナショナル)

<「坊っちゃん」の職業選択>
坊っちゃんは最終的に会津出身の”山嵐”と手を
組む。自身、旗本の末裔である坊っちゃんが山嵐
と手を組むという構図は、赤シャツと野だいこに
代表される明治日本の利己的な実用主義という
新しい秩序と、誠実および忠誠という古きよき
江戸時代の秩序との衝突を象徴していると見る事
もできる。

物語のクライマックスで、山嵐と坊っちゃんが、
遊郭で戯れる偽善者、赤シャツを見張る場面は
「忠臣蔵」のパロディーだという説がある。
山嵐と坊っちゃんも、自分たちのことを江戸時代
末期に倒幕に荷担した武士の一団天誅組になぞら
えて”天誅党”だといっている。

この物語の究極のひねりは、東京に戻った坊ちゃん
が「鉄道の技手」になったことだ。
鉄道は漱石作品のなかで、西洋化のシンボルだ。
侍の血筋を誇りにしていた坊っちゃんが、古きよき
時代を永久追放する職に就いたというのが、究極の
皮肉であり、普遍的な問題でもある。

時代は常に変化している、という思いと、それに
たいするかすかな抵抗感や不安感こそが現代社会
に生きる私たちが共通して抱く痛切な感覚なので
はないだろうか。

「「坊っちゃん」のもっとも深いテーマは、理想
主義的な子供から現実的な大人に成長せざるをえ
ない、人間の宿命にまつわる悲劇ではないだろうか。」

「坊っちゃん」は、いままで「young master」と
訳されてきた。なんとも翻訳はむずかしいものだ。

panse280
posted at 20:59

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