2011年06月16日

草枕

「世界文学のスーパースター夏目漱石」(12)

ダミアン・フラナガン 1969-
damian flanagan

2007.11.29 第1刷発行(講談社インターナショナル)

<多彩なキャラクターと名文>
「若かりしころをふり返れば、だれしも三四郎の
うぶな一面や「坊っちゃん」の向こう見ずで自由
奔放な暴れっぷりが、痛いほどよくわかるものだ。
もう少し大人になれば「それから」の代助のよう
な時期をくぐり抜けることになる。

それを永遠にはつづけられないとわかっていなが
らも、自由気ままな道楽生活を送る人間だ。愛す
る人と過ごす平穏な日々に愛着をおぼえるなら
「門」の御米(およね)と宗助にすぐさま共感する
だろう。

愛する人の胸の内を探ろうと、激しい嫉妬に駆られ
たり、気も狂わんばかりに悩んだりしたら「行人」
に出てくる一郎の苦境が理解できるはず。あるいは
自己中心的な夫を持つ身なら、逆にお直の気持ち
を察することができるだろう。なにもかも捨てて、
山にこもり、冷静な目で世の中を見てみたいと
思う人なら「草枕」の画家に共感を覚えるかも
しれない。

あなた自身(自分ではたとえ英雄気取りでも)どこ
か不器用でコミカルタイプに見られている気がすれ
ば「吾輩は猫である」に登場する苦沙弥に同情でき
るだろう。・・・要するに、人生で遭遇するさまざ
まなシチュエーションが、漱石の小説にでてくる
キャラクターのどれかに当てはまるのだ。
・・・
漱石の文章そのものの多様性も非常に印象的だ。
・・・
私はときに、作品の中の一文をつくづくながめ、
その美と芸術性に賛嘆してしまうことすらある。
・・・
「草枕」から私のお気に入りの一文を紹介しよう。
「恋はうれしい、嬉しい恋が積もれば、恋をせぬ
昔がかえって恋しかろ」」

panse280
posted at 23:51

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