2011年06月14日

漱石とシェイクスピア

「世界文学のスーパースター夏目漱石」(10)

ダミアン・フラナガン 1969-
damian flanagan

2007.11.29 第1刷発行(講談社インターナショナル)

<漱石とシェイクスピア>
「私に言わせれば、漱石に匹敵する作家は
ただ一人、シェイクスピアだ。」

<シェイクスピアを意識する漱石>
1906年、森田草平への手紙、
「ハムレットを凌ぐ傑作を出して天下の
モモンガーを驚かしてやろう・・・」

「虞美人草」の藤尾、初登場場面で、彼女は
「アントニーとクレオパトラ」の一節を読み
あげる。彼女の兄の甲野は、あきらかにハムレット
の分身だ。初期の「倫敦塔」には「リチャード三世」
に出てくる王子たちのシーンが登場する。
「三四郎」では、有名な「尼寺へ行け」という
場面が演じられていた。
熊本での教師時代、漱石はシェイクスピアについて
の課外授業をやり、東京帝国大学でもシェイクスピア
の講義をやっている。
漱石はロンドン留学中にウイリアム・クレイヴの
個人授業を受けているが、クレイブはアーデン版
「シェイクスピア全集」の編者であった。
漱石の「文学論」ではシェイクスピア作品からの
引用数が他を圧倒している。

「漱石は、作家人生を通じてこの「チャンピオン」
(シェイクシピア)との決着をつけるための訓練
を積んでいたようにすら見えてくる。私の考えでは、
両者が互角になったのは「こころ」が発表された
ときだ。」
「こころ」は「ベニスの商人」にインスピレーション
を受けたと思われる。契約、そして同性愛と異性愛
の真の対立が描かれている。「野分」と「ベニスの
商人」との類似点も面白い。その中で、指輪につい
て、漱石はこう書いている。
「指輪は魔物である。沙翁(シェイクスピア)は
指輪を種に幾多の波瀾を描いた。若い男と若い女を
目に見えぬ空裏に繋ぐものは恋である。恋をその
まま手にとらすものは指輪である。」

panse280
posted at 21:17

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