2011年05月30日

怠惰

「太宰治 人生ノート」(7)

太宰治 1909-1948
osamu dazaai

2009.2.20 初版1刷発行(光文社)

<怠惰>
「私の数ある悪徳の中で、最も顕著の悪徳は怠惰
である。・・・こと怠惰に関してだけは、私は、
ほんものである。
・・・
おれは、考えることをしている。ひるあんどん。
面壁九年。さらに想を練り、案を構え。雌伏。
賢者のまさに動かんとするや、必ず愚色あり。熟慮。
潔癖。凝り性。おれの苦しさ、わからんかね。仙脱。
無欲。世が世なら、なあ。沈黙は金。塵事うるさく。
隅の親石。機末だ熟さず。出る杭うたれる。寝ていて
転ぶうれいなし。天衣無縫。桃李言わざれども。絶望。
豚に真珠。一朝、事あらば。ことあげせぬ国。
ばかばかしくって。大器晩成。自矜、自愛。のこりもの
には、福が来る。なんぞ彼等の思い無げなる。死後の
名声。つまり、高級なんだね。千両役者だからね。
晴耕雨読。三度固辞して動かず。鴎(カモメ)は、
あれはオシの鳥です。天を相手にせよ。ジッドは、
お金持なんだろう?」

「一日にバット五十本以上吸い尽くして、酒、のむ
となると一升くらい平気でやって、そのあとお茶漬け
を三杯もかきこんで、・・・要するに怠惰なのである。
・・・豆腐を好む。やはり、食べるのに、なんの手数
もいらないからである。飲み物を好む。牛乳。スウプ。
葛湯。うまいも、まずいもない。ただ、摂取するのに
面倒がないからである。そう言えば、この男は、どう
やら、暑い、寒いを知らないようである。夏、どんな
に暑くても、団扇の類を用いない。めんどうくさい
からである。
・・・
寒さも、知らないのではなかろうか。誰かほかのひと
でも火鉢に炭をついでくれないことには、一日、火の
ない火鉢を抱いて、じっとしている。・・・人から
注意されないうちは、晩秋、初冬、厳寒、平気な顔
して夏の白いシャツを黙って着ている。」

panse280
posted at 21:05

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