2011年05月29日

私は変人に非ず

「太宰治 人生ノート」(6)

太宰治 1909-1948
osamu dazaai

2009.2.20 初版1刷発行(光文社)

<私は変人に非ず>
「私はきわめて当たり前の、また古い道徳など
にも非常にこだわる質の男です。・・・なにか
自分のキリスト主義みたいなものも多少含まれ
ているような気がするのです。

キリスト主義といえば、私は・・・あばら家に
住んでいます。私だって人並の家に住みたいとは
思っています。・・・けれども私にはどうしても
いい家に住めないのです。・・・それはキリスト
の汝等己を愛する如く隣人を愛せよという言葉
をへんに頑固に思いこんでしまっているらしい。
・・・
家庭はいつも貧寒の趣きを呈しております。
寝てからいろいろその改善を企画することも
あるけれども、これはどうにも死ななきゃ直らない
というような程度に迄なっているようです。

私も、もう三十九になりますが、世間にこれから
暮らしてゆくということを考えると、呆然とする
だけで、まだ何の自身もありません。だから、
そういういはば弱虫が、妻子を養ってゆくという
ことは、むしろ悲惨といってもいいのではないか
と思うこともあります。」
(「小説新潮」昭和22年11月--自殺の半年前の文章)
--昭和23年6月13日、太宰治自殺--

panse280
posted at 19:55

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