2011年05月20日

ばかばかしい

「評伝森鴎外」(8)

山室静 1906-2000
shizuka yamamuro

1999.4.10 第1刷発行(講談社)

<無私の精神>
「彼(鴎外)のあらゆる思量を越えて、自己
の生命も栄達や名誉への望みもいさぎよく捨て
去って、一筋に愛し崇拝する天皇の死に殉じて
いった乃木夫妻の愚直なまでの無私の美しさは、
おそらく彼を打ちのめさずにはいあかなかった
のだ。・・・
時代の制約、人物の器量の大小などに拘わること
なく、その人間が無私に、そして与えられた境遇
の中で力いっぱいに生きているかぎり、鴎外は
それを愛したのだということになろうか。・・・
そこに「山椒大夫」「じいさんばあさん」「高瀬舟」
「寒山拾得」などの最後期の珠玉作が生まれ、」
そして史伝へと繋がっていくのだろう。

<最後の一句>
大正四年、鴎外53歳、諸新聞が翌年4月の鴎外引退
の報を伝える。鴎外は引退を渋っていたようだ。
また、授爵されなかったことにたいしても不満
だったようだ。
「最後の一句」で、娘は最後に言い放つ「お上の事
には間違はございますまいから」と。

この作は、鴎外の引退を「婦女通信」が伝えた
その翌日に脱稿されている。
「やはり鴎外にはあくまで官職に執着せずには
いられぬ権威主義的な傾向が著しかった・・・」

「官を退いた直後に書いた「空車」は、丸腰に
なった鴎外の痛恨と負け惜しみの強がりを見ること
が出来よう。」

「鴎外は、在野わずか1年8ヶ月ほどで、(鴎外55歳
の12月)宮内庁から帝室博物館総長兼図書頭の辞令
をもらうと「老いぬれと馬に鞭うち千里をも走らん
とおもふ年立ちにけり」と歌って、欣然とまた官吏
生活に入り、死にいたるまで忠実な勤務ぶりを示す
のである。」--60歳で鴎外死す--

「ばかばかしい」、鴎外が臨終の床で言ったといわ
れる言葉である。

panse280
posted at 20:10

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