2011年05月19日

乃木大将自刃が鴎外にもたらしたもの

「評伝森鴎外」(7)

山室静 1906-2000
shizuka yamamuro

1999.4.10 第1刷発行(講談社)

<乃木大将自刃が鴎外にもたらしたもの>
「予が立場」(47歳)「妄想」(49歳)
「カズイスチカ」(49歳)において鴎外は、
自らの立場である諦念をほぼ確立したといえる。

「「天寵」「二人の友」「余興」等の作を
一貫しているものは、これこそゲーテ的
レジグナチオンというべき澄んだ諦念と、
その上に立って日々のつとめに専念する生活
の、ささやかではあろうとその充実と幸福を
讃える気持ちだと思う。これらの作の主題に
なっているのは、ほかならぬ「永遠の不平家」
から足るを知り、感謝を知る境地への移行その
ものだと言ってよい。そのことは「鎚一下」
「天寵」「余興」では、ことにはっきりとして
いる。・・・この移行ないし開眼の契機として、
やはり「かのように」の哲学が何らかの役割
を果たしたのだと思う。しかし、鎚の一下の
ように鴎外の上に天くだって、彼がどうしても
捨てされずにいた小我を粉砕したものは、
たしかに乃木大将の自刃であった。」

補記)「天寵」 宮芳平自伝―森鴎外に愛された
画学生M君の生涯
「天寵」「余興」「二人の友」以上鴎外53歳の作。
「鎚一下」は鴎外51歳の作。

panse280
posted at 22:22

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