2011年05月15日

冷たい鴎外

「評伝森鴎外」(3)

山室静 1906-2000
shizuka yamamuro

1999.4.10 第1刷発行(講談社)

<冷たい鴎外>
登志子との離婚後、恋愛を賛美する作品は
絶える。十年近い独身生活の後、明治35年、
鴎外40歳で、司法官荒木博臣の長女茂子と
再婚。鴎外を決意させたのは、茂子の美貌
だった。茂子の極端な我が儘は「半日」で
描かれている。
しかし、鴎外は茂子との生活に耐えた。

「端的に言えば、彼(鴎外)は妻を一個の独立
した人間としては扱わなくなったのである。
精神の未発達な子供として、あわれみといたわり
を以て対し、手紙で言っているように、「美術
品めいた」その美を愛玩したに止まると言え
ようか。
このような態度が、儒教の結婚観女性観と関係
をもっていることは言うまでもない。しかし、
儒教の教養は鴎外に限らず、露伴にも二葉亭に
も漱石にも、花袋や藤村にさえ、なかなか濃
かった。露伴などは、或いは鴎外よりも深く
豊かであったろう。しかも、これらすべての
人と鴎外との間にも、一線が画される。これら
の人は、すべて儒教的女性観の残滓をひきなが
らも、できるかぎり女性を一個の人間として
扱おうとし、男女関係を愛の上に基づけようと
して、それが裏切られた場合は、深刻に苦悩し
た。鴎外には、この苦悩が見られぬという以上
に、愛の要求そのものが最初の頃はともあれ、
もはやきっぱりと断念されているに近い。」

panse280
posted at 19:21

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