2011年03月25日
わが創作方法--三島由紀夫
「小説読本」(6)
三島由紀夫 1925-1970
yukio mishima
2010.10.25 初版(中央公論新社)
<わが創作方法>
「私(三島)が長篇小説を書くときの創作
方法は、大略次のようである。」
第一に主題を発見する。
発見した主題を半年から数年かけて、材料を
具体性から引き離し、抽象性にまで煮つめる。
第二に環境を研究する。
これはかなり低級な作業で、人の話をきき、
足をつかい、情報を採録する。
該当する会社にたのみ込み、一日オフィスの
椅子に坐らせてもらったりする。
やたらに参考書を買い込むのもこの段階である。
第三に構成を立てる。
これはかなり機械的な作業である。
大雑把な序破急を決める。
第四に書きはじめる。
書きはじめるのと同時に、今までのすべての
準備、すべての努力は一旦ご破算になる。
ここに来てはもう方法論もクソもない。
私(三島)は細部と格闘し、言葉と戦って、
一行一行を進めるほかはない。そして物語の
展開に行き詰ったとき、いつも私を助けるの
は、あの詳細なノオトに書きつけられた、
文字による風景のスケッチである。
三島由紀夫 1925-1970
yukio mishima
2010.10.25 初版(中央公論新社)
<わが創作方法>
「私(三島)が長篇小説を書くときの創作
方法は、大略次のようである。」
第一に主題を発見する。
発見した主題を半年から数年かけて、材料を
具体性から引き離し、抽象性にまで煮つめる。
第二に環境を研究する。
これはかなり低級な作業で、人の話をきき、
足をつかい、情報を採録する。
該当する会社にたのみ込み、一日オフィスの
椅子に坐らせてもらったりする。
やたらに参考書を買い込むのもこの段階である。
第三に構成を立てる。
これはかなり機械的な作業である。
大雑把な序破急を決める。
第四に書きはじめる。
書きはじめるのと同時に、今までのすべての
準備、すべての努力は一旦ご破算になる。
ここに来てはもう方法論もクソもない。
私(三島)は細部と格闘し、言葉と戦って、
一行一行を進めるほかはない。そして物語の
展開に行き詰ったとき、いつも私を助けるの
は、あの詳細なノオトに書きつけられた、
文字による風景のスケッチである。