2011年03月23日
小説技巧
「小説読本」(4)
三島由紀夫 1925-1970
yukio mishima
2010.10.25 初版(中央公論新社)
<小説技巧>
村上一郎氏の「広瀬海軍中佐」という一篇
に心をうたれた。
「こう言っては失礼だが、村上一郎氏の小説
技巧は、ちかごろの芥川賞候補作品などの達
者な技巧と比べると、拙劣を極めたものであ
る。しかしこれほどの拙劣さは、現代に於て
何事かを意味しており、人は少なくともまご
ころがなければ、これほど下手に小説を書く
ことはできない。下手であることが一種の馥
郁(ふくいく)たる香りを放つような小説に、
実に私(三島)は久しぶりに出会ったので
あった。
・・・
この短篇ほど、美しく死ぬことの幸福と、
世間平凡の生きる幸福との対比を、二者択一
のやりきれぬ残酷さで鮮明に呈示している
作品は少ない。」
三島由紀夫 1925-1970
yukio mishima
2010.10.25 初版(中央公論新社)
<小説技巧>
村上一郎氏の「広瀬海軍中佐」という一篇
に心をうたれた。
「こう言っては失礼だが、村上一郎氏の小説
技巧は、ちかごろの芥川賞候補作品などの達
者な技巧と比べると、拙劣を極めたものであ
る。しかしこれほどの拙劣さは、現代に於て
何事かを意味しており、人は少なくともまご
ころがなければ、これほど下手に小説を書く
ことはできない。下手であることが一種の馥
郁(ふくいく)たる香りを放つような小説に、
実に私(三島)は久しぶりに出会ったので
あった。
・・・
この短篇ほど、美しく死ぬことの幸福と、
世間平凡の生きる幸福との対比を、二者択一
のやりきれぬ残酷さで鮮明に呈示している
作品は少ない。」