2010年04月21日

上代の人々の心を知る

「本居宣長(下)」(12)
小林秀雄
hideo kobayashi
1902-1983
平成4.5.25.発行(新潮社)

---本居宣長補記----

<上代の人々の心を知る>
「上代の人々の心を知るには、例えば高天ノ原で、
天照大御神が、御食津大神を祭られていたという
伝説を、そのまま信じなければならない。何故か
というと、伝説は、これを信じていた人々には、
その意味なり、価値なり、必然性なりを明らかに
していたのは、間違いのない事実だからだ。一と口
に言うなら、伝説が、その現実性を、彼等の意識に、
しっかり納得させていないところに、彼等の生活が
成り立ったわけがなかった。これが、宣長がその
「上代の事を、つまびらかに明らむる学問」の為に
立てた明瞭な仮説であった。」

「なまじい「小量の見識」など頼んだが為に、
却って神代の伝説に躓(つまず)くという事に
なる。それが「玉勝間」の文の、「あやしき事の説」
の着想である。」

「彼(宣長)が、世の中の「あやしき事」を肯定した
とは、これに向って、己れの心を開け放ったという
事であって、其処には、神秘な世界への憧れという
ような、あやふやな感情は全く見られないのである。」

「「あやしさ」と親しくなり、その中で、安心して
手足を延ばせる、そういう暮らしの知慧が、おのず
から根底に出来上がっているような心情の持ちよう
が、実人生では、人々を支えている。」

panse280
posted at 19:56

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