2010年02月13日

芸術の最も高い望みは、私達に、自然を啓示するにある

小林秀雄全作品・別巻感想(上)」(5)
--未完のベルグソン論--(1958)
小林秀雄
hideo kobayashi
1902-1983
平成19.3.10.2刷(新潮社)

<ショーペンハウエル哲学>
「ショーペンハウエルの主著の第三巻は、美学であって、
各種の芸術が、次々に論じられ、彼の美への関心は、音楽
に至って極まるのであるが、「音楽は、自ら哲学をやって
いるとは知らぬ精神の、隠れた形而上学の練習」と解される。
世界は「意志」の鏡であり、目に見えぬ「意志」の自己
認識の、自己客観化の劇とするなら、芸術は、劇中の劇、
ハムレットの舞台上の舞台と言ってもよいのであり、特に、
音楽の様に、原劇の模倣が直接で完全な場合には、これを
微に入り細を穿って正しく説明する事が出来れば、真の
哲学となると考えてよいとする。ベルグソンは、美学を
書いていないが、彼が芸術に触れて語る場合、同じ種類の
認識の徹底性が見られる。」

「芸術に関する、ベルグソンの根本の考えは、「笑い」の
なかで語られているが、彼の考えによれば、芸術の最も
高い望みは、私達に、自然を啓示するにある。
・・・
もし私達の感覚や意識が、そういうもの(自然)との直接
な交渉を、普通持っているものなら、誰も彼もが芸術家で
あろうし、或は、芸術とは無用な長物であろう。だが、
そういう贅沢を、容易に許さぬ様に、恐らく自然は人間を
創った。」

panse280
posted at 18:54

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