2009年12月29日

福沢諭吉

林房雄1903-1975
fusao hayashi
三島由紀夫、1925-1970
yukio mishima

「対話・日本人論」(12)
昭和41(1966)年10月20日初版(番町書房)

<福沢諭吉>
(林)
「福沢諭吉は一部の右翼理論家には度すべからざる
西洋派のように思われているが、そうじゃないのだな。
彼は右翼も右翼、大国権論者ですよ。それを理解して
いたのは小泉信三先生でしたね。あの人の書いた
「福沢諭吉」(岩波新書)という本がありますが、
傑出した福沢諭吉論です。」
(三島)
「僕はやはり啓蒙主義の哲学は全部疑問がある。
福沢諭吉もそうですが、小泉さんの思想にも疑問
を感ずる。あの本も読みましたが、僕は感動しなかった
な。たとえば民権論が盛んなときの国権論は、それは
りっぱですけれども、福沢諭吉のいちばんの歴史に
対する洞察のなさというのは、攘夷論者のなかに、
改革する能力を予見しなかったことですよ。」
(林)
「僕はそうは思わないね。福沢はやせがまんをつ
らぬいた人物です。・・・維新後は反薩長藩閥の
姿勢を一生もちつづけた。・・・明治十年には
「逆臣」西郷隆盛の弁護論を書いたし・・・ただの
啓蒙家じゃありませんね。」
(三島)
「諭吉は七十歳になっても、晩年ずうっと、毎日
百本居合を抜いていたそうですね。僕は、そういう
つまらないことに、とても感心するのです。」

「僕はいま林さんとお話してると、ちょうど幕末に、
なんだか開国論者と攘夷論者が話しているようで
おもしろいが・・・(笑い)。
・・・
僕は文化上の攘夷論者なんですよ、どうしても。」


panse280
posted at 15:35

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