2009年07月12日

ショーペンハウアーの文章について

ショーペンハウアー 1788-1860
arthur schopenhauer

「ショウペンハウアー全集別巻」(396)
--「生涯と思想」--(15)


「ショーペンハウアー,1938」
(トーマス・マン)より(5)

<ショーペンハウアーの文章について>
「生まれつき並はずれた雄弁、彼の文筆家としての
天才は、燦然(さんぜん)たる、しかも氷のように
冷徹な完成の極みに達する。その語り口は、辛辣な
激越さをおび、経験と広範な知見とから来たアクセ
ントがこめられていて、われわれを恐怖させ、また、
その力強い真実性によってわれわれを魅惑する。
それは、あるページでは、眼光炯々(けいけい)と
して、唇をへの字にむすび、ギリシャ語やラテン語
の引用文をちりばめながら吐きだされる、生に対す
る激しい、手厳しい嘲笑である。世界の悲惨さを思い
やりぶかく、しかも仮借無く暴き出し、つきとめ、
査定し、理由づける、とはいうものの、こんなふうに
微に入り細をうがって暗い表現力で述べられると、
つい気が滅入ってしまうだろうと思われるが、そう
いう重苦しさは微塵もなく、むしろ、そのなかに
表現されている精神的なプロテストの力、抑えられ
た声のわななきのなかから聞きとれる人間的な瞋恚
(しんい)の炎によって、不思議に深い満足の思い
に満たされるのである。この満足感をおぼえない
読者はいないだろう。というのは、一人の審判する
精神にして偉大な文筆家が世界の苦悩について語る
ときは、一般的に語ってはいても、じつは君や私の
苦悩についても語っているのであって、われわれは
みんな、この素晴らしい言葉によって自分たちの
復讐が果たされたのだと思い、ほとんど勝利の喜び
をさえおぼえるからである。」


panse280
posted at 19:56

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