2008年05月22日

ソ連の行為は永遠に忘れない

山田風太郎 1922-2001
fuutaro yamada

「戦中派不戦日記」(5)完

8/16 日本が負けた。嘘だ!いや、嘘ではない。・・・
台湾、朝鮮、満州、樺太はもう日本のものではない。
・・・背後から日本を刺したにひとしいソ連の行為は
日本人として永遠に忘れない・・

9/1 新聞がそろそろ軍閥を叩きはじめた。

9/2 今になってみると、自分にしても、すべてを
「運命」にかけて、連日連夜爆撃の東京に平然と住んで
いたことがふしぎである。

9/12 「東条大将はピストルを以て・・・」ここまで
きいたとき、全日本人は、「とうとうやったか!」
と叫んだであろう。来るべきものが来た、という感動
と悲哀とともに、安堵の吐息を吐いたであろう。
しかし、そのあとがいけない。なぜ東条大将は、阿南
陸相のごとくいさぎよくあの夜に死ななかったのか。
なぜ東条大将は、阿南陸相のごとく日本刀を用いなかった
のか。・・・そして死に損なっている。日本人は苦い
笑いを浮かべずにはいられない。

9/17 アメリカ人は東条大将をヒトラーに匹敵する怪物
に考えているらしいが、これは滑稽である。日本人は
東条大将を、戦争中も現在も、唯一最大の指導者であった
とは考えていない。一陸軍大将だと思っているに過ぎない。
・・・
「過去24時間に日本の名士188人が自殺した」と外人が
報じている。

9/18 「アンナ・カレーニナ」を読みはじめる。
トルストイは、いかなる尊厳にも思想にも神聖にも
媚態にも苦悶にも無邪気にも慈愛にも皮肉にも、絶対
に眼をくらませられない。彼はあらゆる人間の仮面を
ひんむいて、もぐりこんで、冷然と、悠揚とその臓腑
を切り開き、ならべてゆく。

10/13 「虚笑(そらわらい)するものは臆病なり(葉隠)」

10/23 「日本美の再発見(ブルノー・タウト)」を読む。

11/12 日本人は敗戦の打撃による自失からようやく立ち
直ろうとしている。

12/8 山下奉文大将、比島裁判でついに死刑宣告さる。

12/14 この戦争の日本人にもたらした最大の惨禍は、
日本人の心情が無感動になったということであった。

12/31 大雪 運命の年暮るる。 日本は亡国として
存在す。

panse280
posted at 20:25

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