スミレのように
岡潔1901-1978
kiyoshi oka
「春宵十話」(2)
<スミレのように>
「私は、人には表現法が一つあればよいと
思っている。
・・・
私は数学なんかして人類にどういう利益が
あるのだと問う人に対しては、スミレはただ
スミレのように咲けばよいのであって、その
ことが春の野にどのような影響があろうと
なかろうと、スミレのあずかり知らないこと
だと答えて来た。
その私が急に少しお話ししようと思い立った
のは、近ごろのこのくにのありさまがひどく
心配になって、とうてい話しかけずにはいら
れなくなったからである。
その結果がこの小冊子となった。」
(1963.1.30)