2006年12月18日

明暗

吉本隆明1924-
takaaki yoshimoto

「夏目漱石を読む」(17)完


<明暗>
「漱石の作品には漱石自身のこころや理念の
分身とおもえるものを幾分か投入された主人物
が出てきたり、あるいはなんらかの意味で漱石
の感情とか、理念を、登場人物に移入してある
わけですが、「明暗」だけはそういうことが
ないのです。
つまり、ある意味では、漱石にとって初めての
小説らしい小説を書いたというふうにもいえま
すし、初めて、どんな登場人物でも、相対的な
目でながめるひとつの視点を獲得したともいえ
ます。」

「「明暗」だけは、ごくふつうの人物を描きだ
していて、漱石らしい狂気じみた人も、また
非凡な人も、それから神経症的な言動の人も
出てきません。
初めて漱石自身の影は作品の外に置きまして、
相対的にふつうの登場人物を描いていくことを
やっています。
・・・・
漱石が芸術的にといいましょうか、たいへん
円熟したときですから、作品の構成上で破綻
が少ないということでは、いちばんいい作品
なんじゃないかとおもいます。
それが未完のこの作品の結末を読者に空想さ
せるのだとおもいます。」

「「明暗」という作品は、漱石が初めて女性と
女性とのぶつかり方、かかわり方を自信をもって
描いた作品じゃないかとおもいます。」

panse280
posted at 20:36

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