2006年12月08日

勝つものは必ず女である

吉本隆明1924-
takaaki yoshimoto

「夏目漱石を読む」(7)


<勝つものは必ず女である>
「女の二十四は男の三十にあたる。理も知らぬ、
世の中がなぜ廻転して、なぜ落ちつくかは無論
知らぬ。大いなる古今の舞台の極まりなく発展
するうちに、自己はいかなる地位を占めて、いか
なる役割を演じつつあるかは、固(もと)より
知らぬ。ただ口だけは巧者である。
天下を相手にする事も、国家を向うへ廻す事も、
一団の群衆を眼前に、事を処する事も、女には
出来ぬ。女はただ一人を相手にする芸当を心得て
いる。
一人と一人と戦う時、勝つものは必ず女である。
男は必ず負ける、
具象の籠の中に飼われて、個体の粟(あわ)を
啄(ついば)んでは嬉しげに羽ばたきするものは
女である。
籠の中の小天地で女と鳴く音(ね)を競うものは
必ず斃(たお)れる。」
(夏目漱石「虞美人草」より)


panse280
posted at 19:45

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