2006年02月27日

切腹

新渡戸稲造1862-1933
inazo nitobe

「武士道」(10)


<切腹>
「・・前なる短刀を確(し)かと取り上げ、嬉しげ
にさも愛着するばかりにこれを眺め、暫時最後の
観念を集中するよと見えたが、やがて左の腹を深く
刺して徐(しず)かに右に引き廻し、また元に返して
少しく切り上げた。
この凄まじくも痛ましき動作の間、彼は顔の筋一つ
動かさなかった。彼は短刀を引き抜き、前にかがみて
首を差し伸べた。苦痛の表情が始めて彼の顔をよぎった
が、少しも音声に現れない。
この時まで側に蹲りて彼の一挙一動を身じろぎもせず
うち守っていた介錯は、やおら立ち上がり、一瞬太刀
を空に振り上げた。秋水一閃、物凄き音、どうとたお
るる響き、一撃の下に首体たちまちその所を異(こと)
にした。」
(滝善三郎の切腹「神戸の外国人襲撃のとがによる」
ミットフォード「旧日本の物語」より)

panse280
posted at 21:16

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