外見の道徳
三島由紀夫1925-1970
yukio mishima
「葉隠入門」(6)
<外見の道徳>
「とかく武士は、しほたれ草臥(くたび)れ
たるは疵(きず)なり。
勇み進みて、物に勝ち浮ぶ心にてなければ、
用に立たざるなり。」
武士道というものは、そのしおたれ、くたびれ
たものを、表へ出さぬようにと自制する心の
政治学であった。
健康であることよりも健康に見えることを重要と
考え、勇敢であることよりも勇敢に見えることを
大切に考える、このような道徳観は、男性特有の
虚栄心に生理的基礎を置いている点で、もっとも
男性的な道徳観といえるかもしれない。(三島)