2015年03月11日

妻は朝寝坊である

「漱石全集第26巻」(4)
--日記及び断片(下)--

夏目漱石 1867-1916
souseki natsume

1979.12.5 第4刷発行(岩波書店)

<日記及断片大正三年(1914)>

・妻は私が黙っていると決して向ふから口を
 利かない女であった。ある時私は膳に向かって
 箸を取るとその箸が汚れていたのでそれを見て
 いた。すると妻が、汚れていますかと聞いた。

・妻は朝寝坊である。小言をいうとなお起きない、
 時とすると九時でも十時でも寝ている。
 その癖どこかへ約束があって行く時は何時だ
 ろうが驚くべく早く起きる。
 近頃、私より早く起きるやうになった。
 是はわが家の七不思議の一つである。

・この前にチビの下女がいた。いたって品性のよく
 ないこせこせした下女であったがそれが大層妻の
 気に入っていた。私はとうとうそれを出してしま
 った。実に見るのも厭な動物だった。

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