妻は朝寝坊である
「漱石全集第26巻」(4)
--日記及び断片(下)--
夏目漱石 1867-1916
souseki natsume
1979.12.5 第4刷発行(岩波書店)
<日記及断片大正三年(1914)>
・妻は私が黙っていると決して向ふから口を
利かない女であった。ある時私は膳に向かって
箸を取るとその箸が汚れていたのでそれを見て
いた。すると妻が、汚れていますかと聞いた。
・妻は朝寝坊である。小言をいうとなお起きない、
時とすると九時でも十時でも寝ている。
その癖どこかへ約束があって行く時は何時だ
ろうが驚くべく早く起きる。
近頃、私より早く起きるやうになった。
是はわが家の七不思議の一つである。
・この前にチビの下女がいた。いたって品性のよく
ないこせこせした下女であったがそれが大層妻の
気に入っていた。私はとうとうそれを出してしま
った。実に見るのも厭な動物だった。
--日記及び断片(下)--
夏目漱石 1867-1916
souseki natsume
1979.12.5 第4刷発行(岩波書店)
<日記及断片大正三年(1914)>
・妻は私が黙っていると決して向ふから口を
利かない女であった。ある時私は膳に向かって
箸を取るとその箸が汚れていたのでそれを見て
いた。すると妻が、汚れていますかと聞いた。
・妻は朝寝坊である。小言をいうとなお起きない、
時とすると九時でも十時でも寝ている。
その癖どこかへ約束があって行く時は何時だ
ろうが驚くべく早く起きる。
近頃、私より早く起きるやうになった。
是はわが家の七不思議の一つである。
・この前にチビの下女がいた。いたって品性のよく
ないこせこせした下女であったがそれが大層妻の
気に入っていた。私はとうとうそれを出してしま
った。実に見るのも厭な動物だった。