漱石と骨董
「漱石の思い出」(17)
夏目鏡子述 1877-1963
kyoko natsume
2009.10.25 第7刷発行(文春文庫)
<漱石と骨董>
「(漱石は)よく散歩へ出ては、書画屋や
古道具屋などをのぞいて、何かと安物をあ
さって参りました。ほんのお小遣いで買って
くるので、贋物であろうとそんなことは
いっこうお構いなしで、自分が観て絵がおも
しろければそれでいいというふうで、ぼろぼろ
のきたないものを買ってきてはかけて見て
楽しんでいました。
もちろんお金というお金を出さないのですか
ら、たいしたもののあろうはずはありませんが、
ともかくこんなふうにして自分では楽しんで
おりました。
良寛(*)のほかに好きで集めたものに伊予の明月
上人と蔵沢とがございます。蔵沢の墨竹は珍重
しまして、手本にして書いていました。
本を読むのが道楽ぐらいのもので、まったく
自分に使うお小遣いというもののいらない人
でした。」
(*)このころはまだ良寛ブームはなかった。
夏目鏡子述 1877-1963
kyoko natsume
2009.10.25 第7刷発行(文春文庫)
<漱石と骨董>
「(漱石は)よく散歩へ出ては、書画屋や
古道具屋などをのぞいて、何かと安物をあ
さって参りました。ほんのお小遣いで買って
くるので、贋物であろうとそんなことは
いっこうお構いなしで、自分が観て絵がおも
しろければそれでいいというふうで、ぼろぼろ
のきたないものを買ってきてはかけて見て
楽しんでいました。
もちろんお金というお金を出さないのですか
ら、たいしたもののあろうはずはありませんが、
ともかくこんなふうにして自分では楽しんで
おりました。
良寛(*)のほかに好きで集めたものに伊予の明月
上人と蔵沢とがございます。蔵沢の墨竹は珍重
しまして、手本にして書いていました。
本を読むのが道楽ぐらいのもので、まったく
自分に使うお小遣いというもののいらない人
でした。」
(*)このころはまだ良寛ブームはなかった。