2011年02月28日

八十歳のアリア

「八十歳のアリア」(1)
糸川英夫 1912-1999
hideo itokawa

1992.7.5 第1刷(文藝春秋)

<ヒデオ・イトカワ号>
「ヒデオ・イトカワ号」、それは、1992年80歳に
なる糸川英夫が45年の歳月をかけてつくった
バイオリンの名前である。

このバイオリンはひたすら波動方程式を解くこと
によって設計されたものである。

1945年8月15日、糸川33歳、敗戦の玉音放送を
東京帝大の研究室で聞く。
ポツダム条約を受諾。ポツダム条約には、「日本は
航空宇宙に関する研究、製作、業務は一切やって
はいけない」と書かれていた。

糸川英夫 - 飛行機=0

糸川は自殺のみ考えていた。9月半ば、熊谷千尋と
いう学生が糸川の研究室に訪ねてきた。

「いいバイオリンがほしいんです。・・・
自分の相談というのは、先生は隼戦闘機を設計した
エンジニアだから、それだけの頭脳でバイオリンを
設計したら、100円ぐらいの材料で、1億円ぐらいの
音が出るバイオリンができるんじゃないでしょうか。
先生ならばつくることができるはずです。」

話を聞いているうちに、「200年も300年もまえの
職人さんがつくったものに、この20世紀半ばの
現代科学がいまだに及ばないというのは、科学者と
して屈辱的だ」と考えはじめたのである。

「僕の自殺は、バイオリン完成まで執行猶予になった。」


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