2006年11月30日

大和魂

赤瀬川原平1937-
genpei akasegawa

「大和魂」(1)

<戦艦大和>
「本物の戦艦大和はいま鹿児島の枕崎市沖約二百キロ
の海底に沈んでいるが、それは本物とはいえ、じつは
迫真の模型だったのではないだろうか。
いやもちろん本物の大和は本物の大砲を積んで、本物
の砲弾を積んで、いくつかの本物の海戦もおこなって
はいるのだけど、それは戦艦大和の役割ではなかった
ような気がする。
いや戦闘に敗けて撃沈されたからそういうのではなくて
、どうも造る人々が、そういう戦闘以上のものを念じな
がら大和を造った、と思われるのだ。
・・・・
ヒーローが望まれていた時代、・・・
双葉山を鉄で造る、みたいな思いで力を結集したのが、
世界最大の戦艦大和だったのだろう。
・・・・
戦争というのは敵を倒すことで、そのためにだけ武器が
あるはずなのに、この場合はもう敵を超えたような趣が
ある。
眼前からもう敵が消えているようなのだ。
戦争そのものも通り越して、とにかく最強の戦艦の大和
を造る、その造るという一心だけで事が進行している。
・・・・
一瞬ではあっても、戦争が消えてしまうところに、何か
しら感動する。実用性を超えて、何か無用ともいえる
ものを造り上げているのだ。
壺が壺でありながら、ほとんど芸術みたいなものに
なっていくのと似ている。
・・・・
結局日本は戦艦では最高位に達したが、戦争には敗れた。
そこがどうにも芸術なのだ。」

大和魂


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