2005年03月31日

最も偉大な男性について-2

モンテーニュ1533-1592
Michel Eyquem de Montaigne

「エセー」(34)


<最も偉大な男性について-2>
「もしもこれまでに知ったあらゆる男性の中で
誰を選ぶかと聞かれたら、三人の群を抜いて
すぐれた人物がいると思う。

・ホメロス
・アレクサンドロス大王
・エパメイノンダス

<アレクサンドロス大王>
「わずか三十三才で人間の住める土地をことごと
く勝利者として踏破したあの偉大さはどうだろう。
・・・正義、節制、寛容、信義、部下に対する愛
情、敗者に対する仁愛などの多くのすぐれた徳は
どうだろう。・・・一挙にたくさんのペルシャ人
の捕虜を殺したことや、約束を破ってまでインド
の兵士の一隊を殺したことや、コッサイオイ族を
子供にいたるまで殺したことなどは、ちょっと弁
解のできない激情に駆られた行為である。・・・
彼のことを、徳は自然から得、不徳は運命から得
ている、と言ったのは至言である。・・・


彼はいささか自慢好きで、自分の悪口を聞くのに
我慢がなさすぎたこと、、・・・奇跡的なまでに
まれな美しさと特徴をもった体格をしていたこと、
あれほどに若々しく、燃えるような紅顔の下に堂
々たる風采を保っていたこと、・・・知識、才能
にすぐれていたこと、偉大な栄光が純粋無垢に、
汚点と羨望を絶して長く続いたこと、彼の死後も
長く、その像を刻んだメダルを帯びる者にしあわ
せが来るということが宗教的信念になっていたこ
と、・・・今日でも、他のあらゆる歴史を軽蔑す
るマホメット教徒が彼の歴史だけは特別に信用し、
尊敬するということ、これらのことを全部ひとま
とめにして考える人ならば、私がカエサルさえも
さしおいてアレクサンドロスを選ぶことも当然だ
というであろう。カエサルこそは私にこの選択を
迷わせた唯一の人物である。
またカエサルの武勲には彼自身の力によるものが
より多く、アレクサンドロスの武勲には運命に負
うものがより多いことも否定できない。
この二人は多くの等しいものをもっていたが、あ
る点ではおそらくカエサルのほうが偉大であった。」


panse280
posted at 21:06

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字