2004年12月17日

匂い立つ歌

島崎藤村1872-1943
toson shimazaki

「若菜集」

日本近代詩の母、藤村の「若菜集」には
新鮮な”匂い”がある。
「その音調の文(あや)は春の野に立つ
絲遊(かげろう)の微かな影を心の空に
揺がすのである。」(吉田精一)


藤村詩集

「「ひとりさみしき吾耳は
吹く北風を琴と聴き
悲しみ深き吾眼には
色無き石も花と見き」
私が一生の曙はこんな風にして開けて来た。」

<初恋>
「まだあげ初(そ)めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅(うすくれない)の秋の実に
人こひ初(そ)めしはじめなり

わがこころなきためいきの
その髪の毛にかかるとき
たのしき恋の盃(さかづき)を
君が情(なさけ)に酌みしかな

林檎畑の樹(こ)の下に
おのづからなる細道は
誰(た)が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ」

<若菜集ー序のうた>
「心無(な)き歌のしらべは
一房の葡萄(ぶどう)のごとし
なさけある手にも摘(つ)まれて
あたたかき酒となるらむ」

panse280
posted at 23:03

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