2004年12月09日

青猫

萩原 朔太郎 1886-1942
Sakutaro Hagiwara

「定本青猫 萩原朔太郎」

「この詩人の詩は蒼く深く、又すさまじく美しく、
日本語の能力を誰も予期しなかったほど大きくした」
(高村光太郎)


---<青猫>の序よりの抜粋---------------------

「宇宙は意志の現れであり、意志の本質は惱みである
              シヨウペンハウエル
自序

「青猫」ほどにも、私にとつて懷しく悲しい詩集はない。

これらの詩篇に於けるイメーヂとヴイジヨンとは、涙の
網膜に映じた幻燈の繪で、雨の日の硝子窓にかかる曇り
のやうに、拭けども拭けども後から後から現れて來る悲
しみの表象だつた。

「青猫」の「青」は英語の Blue を意味してゐるのであ
る。即ち「希望なき」「憂鬱なる」「疲勞せる」等の語
意を含む言葉として使用した。

尚この詩集を書いた當時、私はシヨーペンハウエルに惑
溺してゐたので、あの意志否定の哲學に本質してゐる、
厭世的な無爲のアンニユイ、小乘佛教的な寂滅爲樂の厭
世感が、自(おのづ)から詩の情想の底に漂つてゐる。

西暦一九三四年秋 著 者 」

---------------------------------------------


panse280
posted at 20:57

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字